3日間集団集中治療へ参加(3日目)
集団集中治療も3日目を迎え、私は少し焦りを感じていました。1日目、2日目ともに自分の症状にはあまり適合しないERPのメニューであったため、自分の症状に回復の兆しが感じられませんでした。最終日の3日目も手ごたえが感じられなかったら、他のクリニックや治療法をまた一から探さなくてはなりません。すでに会社から給料が支給される3か月の休職期間を過ぎており、雇用保険から傷病手当の支給が開始されようとしていました。
1日目、2日目の治療内容は過去記事を参照してください。
- 3日目のメニューを告知
- 銀座の歩行者天国
- 回復の道筋を悟る
3日目のメニューを告知
3日目の朝、参加者がクリニックに集まると、先生が白いスクリーンに何やら映像を投影していました。どうやら、YouTubeで公開されているダンス練習用の動画のようでした。私たち、患者のグループが不思議そうに映像を見ていると、先生がふと「今日は銀座の歩行者天国でこれを踊ります」と本日のメニューを告知されました。
「えっ!!」患者一同は驚くとともに、焦り始めました。東京の銀座には百貨店やブランドショップが並ぶ大通りがあり、そこは土日に歩行者天国となって、大変な人出でにぎわいます。そこでダンスなどしたら、とてつもない人に奇異の目で見られること必至です。私は東京在住ですので、歩行者の中に知り合いがいる可能性も十分にあります。とりわけ、失敗することに恐怖を感じる私は、このメニューに猛烈な恐怖感を感じました。
銀座の歩行者天国
昼食をとったあと、我々は銀座に歩いて出かけました。いよいよ歩行者天国に入ります。我々は手始めに、大通りの真ん中で準備体操をしました。それから50メートルダッシュをしてみたり、目をつぶって白線の上を歩くゲームなどをしました。すでに謎の集団が歩行者天国で変なことをしている、と周りの人々の注目を集めていました。
「では踊りましょう」先生が携帯で音楽を流し、我々はついに銀座の大通りで集団でダンスを披露し始めました。振り付けは朝にちらっと見たYouTubeの映像の記憶しかないので、とてつもなく下手なダンスになりました。道行く人は立ち止まり、スマホをこちらに向けています。ブランドショップの警備員は表に警戒のため出てきます。とてつもない恥ずかしさが我々の心を貫いていきました。
回復の道筋を悟る
ダンスを始めてしばらくは、強烈な羞恥心が沸き起こりましたが、不思議なことに私のなかでだんだんと「楽しい」という感情が芽生えてきました。それは、子供のころに近所でいたずらをしているような感覚に似ていて、いつの間にか私は全力の笑顔で踊っていました。ダンスが終わった後、我々は再びクリニックに歩いて引き返しました。参加者が口々に「恥ずかしかった」「やっと終わった」など不快感を漏らしているなか、私は「楽しかった」という感覚をかみしめていました。
中学3年生で強迫性障害に苦しみ始めてから、35歳当時で20年間、私は「楽しい」という感覚を忘れていました。常に失敗することへの恐怖(強迫観念)とそれを回避する方法を考えること(強迫行為)に明け暮れ、目の前のことに何ら集中できなくなっていたため、何をしても楽しくなかったのです。そんな私が、まさに20年ぶりに「楽しい」という感覚を味わいました。「楽しい」とき、強迫性障害の苦しみは消えています。そのとき私は、強迫性障害から抜け出す道筋を悟ったのです。